スツール

ターバン女のひとりごと

2024.08.16 更新

『踊る日本人19』

ついに郡上おどりが始まった。踊れる人の動きを血眼で見ながら踊る。

簡単そうに見えるが曲が終わる頃になって、何となく大まかな振りが踊れるようになる程度。

輪の中心は基本的に踊れる人。外側は初心者がほとんどだ。

郡上おどりの一つで、割と風情のある踊りの『カワサキ』は、保存会の練習でも踊ったことがあるので、何となーくは踊れるし、『春駒』という威勢のいい曲もお馴染みの曲で、踊っていてとても楽しい。

多少振りが間違っていても気にしない。楽しむことが一番の目的なのだ。

慣れた人たちをよく観察していると、皆下駄を履いている。その下駄をカツーンと鳴らしながら踊る。この下駄の音も踊りの一部になっていて、それが何とも風情があるではないか。

自分も下駄を履いて行ったが、カツーンと綺麗に鳴り響く作りではなかったので、スカスカとスカすばかり。ろくに踊りもできないが、あの音はとても魅力的である。

ええなあ、あの下駄めちゃくちゃ欲しいやん。

またひとつ、胸の奥で野望が芽生えた。来年はあの下駄履いてここに来よ。

途中休憩に入り、保存会のお姉さん方と合流。6月だがこの日30度近い気温で汗を拭きながら、爽快な笑顔。休憩しながら踊っている方もいるし、ノンストップで踊り続けてる方もいた。とにかく皆70歳を過ぎてるとは思えない活動っぷりで、踊りへの探究心が尋常ではない。なんなら踊る前より元気になっている・・!足腰、どないなってんの。

しかし自分的には今回の選曲、しっとりとした曲が多いので、イマイチのめり込めない。軽快なステップ踏むような踊りの方が気分が上がるのである。

そうこうしてると、可愛らしいピンクの浴衣を着た、随分ガタイの良い白塗りのお姉さんと遭遇する。髪はおかっぱだが、よく見るとおっさんだ。どことなく赤井英和に似ている。

赤井英和が白塗りで浴衣着てるとしか思えない。

聞くと名物おじさんのようで、全国の郡上おどりのイベントを追いかけて各地で出没してるとのこと。

「出会えたらラッキーなのよん」と自ら言っていた。ドクターイエロー的な確率?こんなことに運を使ってしまっていいのだろうか、と思いつつ、名物おじさんとみんなで記念写真を撮る。

後でこの写真を見返すと、40代中年女(もちろん私のことだ)と70代〜80代のお元気お姉さん軍団、と、白塗りの赤井英和似の名物おじさんというカオスな仕上がりになっており、踊りの思い出に強烈に刻み込まれることとなった。

小休憩が終わると、一斉に輪ができる。名物おじさんは「こうやって踊るのよん」と振りを教えてくれた。

京都市役所前の広場の横で、何かの抗議活動が行われていた。そこに郡上おどりのお囃子が流れ、スピーカーからの大音量抗議デモの声が交わることなく同時にその場に響きわたる。

後で「デモの音がうるさくて腹立ったわあ!」と怒ってる方もいたが、私は踊りに集中していたのであまり気にはならなかった。

ただ来年も参加したい、あの下駄を履いて、とだけ思っていたのである。

帰宅してから踊り部会のグループラインに感想コメントが続々と入っていた。

「来年も行きたいで〜す」「潰してもいい下駄を履いていきます」「来年は日焼け止めをしっかり塗り帽子を忘れないで行きます!」

もうすでに来年のことを考えている・・!意欲しかない・・!

踊っているから元気なのか、元気だから踊るのか、もはやどうでもいいことだが、楽しみながら生きているひとたちは、とてもうつくしい。

つづく

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