スツール

ターバン女のひとりごと

2024.02.15 更新

『踊る日本人13』

知り合いの着物好きの女性は、お出かけの際に着物を着て楽しんでいる。着方にもこだわりがあり、きちんとしたことよりも少し小慣れた粋な着方を研究しているという。

私は着物好きでもなんでもないし、踊りや舞を習っている故に「必要に迫られて」着ている感があるし、なんなら誰かに着せてもらいたいと思うくらいズボラなタイプの人間だ。

彼女が言うには、「着付け教室に通うのもいいけど、まずは毎週一回とか、着物を着る日を作って慣れていくことだと思うよ」と。

私は彼女の言うとおり、お稽古や練習のたびに着物を着て、誰かとランチ、と言う時にも着物を着るようにして、恥をさらしながら覚えていく。

先日、保存会の新年会で義母から譲り受けた黒絵羽を羽織って行った時である。その羽織に袖を通すのは初めてで、気分晴れやかに会場に到着すると、踊りの先生から

「ちょっと、あんた、あ〜もう〜」と、怪訝な顔をされながら、着方を直される。

どうも羽織の着方が間違っていたようなのである。

そこを直されたら、羽織紐の結び方、帯紐の結び方、「あ〜も〜全部気になるわ!」と直される。

ここで注意してくださる先生はとても親切だ。

中にはちらりと見て、何も言わずに微笑まれる人がいて、これが非常にこわい。

そう言う視線を感じた時の対処法は、「そんなん最初からわかるわけないし、知らんし」と言う開き直りである。

なぜなら、私は着物が完璧に着こなしたい訳ではなく、ただ踊りたいだけ、なのだ。

そうやって踊りに引っ張られて、覚えていっている。

踊りが全部、人や物や、経験を持ってきてくれるのだ。

つづく

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