『踊る日本人⑧』
休憩に入ると散り散りになり、再開されると自然と輪ができる。
参加者は若者層も多いが、いぶし銀の年配者もいらっしゃる。
浴衣姿がこなれたおっちゃんは、休憩に入ると「ちょっと一服」と言って、端っこの方でタバコをぷかぷかと吹かしていた。
踊った後の一服は実にうまそうだ。
複数人で来てる人もいるし、一人で参加している方も意外と多い。
特に女性の一人参加率が高く、一見静かな佇まいだが、内側は「真剣に踊りに来ました!」という闘志に溢れている。
ある方にインタビューしてみた。
滋賀県から来た女性。徹夜踊りにも毎年参加され、郡上愛が非常に強い。
滋賀県といえば江州音頭が有名だが、「江州音頭は踊られないのですか?」と聞くと、
「踊りません。郡上しか」と意志のある表情ではっきりと返された。
江州音頭好きとしては、ここで「江州音頭も踊りますよ♪」「わあ、いいですね!私も好きなんです!」と楽しく会話に花が咲くのかと期待していたものの、「江州音頭は一切踊りません」とキッパリと門を閉められた以上は無理にこじ開けることもできない。
逆に潔さすら感じる。
一見皆踊り以外の共通項はあまりなさそうだが、多世代でこれだけ交流できる機会というのは中々ないのではないか。
しかもみんな笑顔で楽しそうというのが、いい。
ある年配の女性は岐阜県から来られ、このイベントに途中まで参加されて、ロームシアターでの斉藤和義のライブに今から行ってきまーす!と意気揚々と去っていかれた。
めちゃくちゃ元気だ。人生を謳歌してるとしか言いようがない。
踊りも終盤に差し掛かり、これが流れると〆だという曲が流れ、一気にムードは名残惜しくなってくる。
しっとりと曲は締められ、一斉に散り散りとなった。
帰り際に踊りの神様にお礼を伝えにいく。
聞くと神様は大阪在住で、正調踊りをわざわざ習いに名古屋まで通っているという。
一番近くで教えてくれる場所がそこだからだそうだ。本気の人だ。そして通りすがり程度の私にも熱心に指導してくださる。
郡上おどりが本当に好きなのだろうな、生き甲斐なのだろうな、と思わずにはいられない。
神様はそのまま雑踏に消えて行った。
私は結局初めての参加で、3時間踊り呆けていた。
どの祭りの時もそうだが、疲れは全く出ない。
好きなことをしていると疲れないように人間の体はできているのだと思った。
つづく