『踊る日本人⑥』
SNSのタイムラインに、ひとつの祭情報が上がってきた。
郡上おどりin京都というイベントである。
岐阜の郡上おどりの楽しさを広めるために、2008年からスタートしたイベントである。
ここ数年は中止されていたが、今年から再開されるとのこと。
郡上おどりは保存会でも、『かわさき』『春駒』などを踊ったことはあるし、徹夜踊りの動画なども何度も観ていた。
ずっと行ってみたいと思っていた祭のひとつである。
それが京都で踊れる絶好のチャンス!誰でも参加OK!
ここは満を持して参加するしかない。
夫に伝えると、「俺も行ってみようかな・・」とボソッと呟いた。
息子にも聞いてみると、真顔で「行かない」と即答だったので、義母に子守りをお願いした。
当日浴衣に着替えていると、夫は「え!それで行くの?!もっとラフなスタイルで行くのかと思ってた」と驚いていた。
夫は私の祭へのパッションをかなり低くみていたようだ。
「意気込み」しかない自分なりの正装で、前のめりで鼻息荒く開催場所へ、いざ出陣である。
会場に到着すると、すでにお囃子の音が鳴り響き、輪ができ、非常に盛り上がっている。
輪の中心は「筋金入りの郡上おどり好き」の人たちが華麗に踊っている。
なんとなく遠巻きで見ながら、しれっと輪の中に入ってみる。
前後の人の踊りをチラチラ見ながら、踊ってみる。
これが中々難しく、笑ってしまうくらいぎこちない。
普段保存会では知ってる曲しか踊らないので、知らない踊りを初見で踊るのはかなり新鮮だ。
しかし誰でも最初はそんなものである。
踊れなくても繰り返し真似していたら、そのうちなんとなくは踊れるようになるし、それ以前に「楽しむ」ことが盆踊りの醍醐味である。
たまに本当は踊りたいけど「ちゃんと踊れないから」という理由で、輪の中に入るのを躊躇される方がいる。
個人的には「ちゃんと踊れなくてもいい」と思っている。舞台で踊るわけではないので、各々が好きなように、好きなスタイルで踊って楽しめばいいのではないか。
人の目を気にせず、踊ることに没頭する、これが盆踊りの楽しさだ。
やっと慣れてきた頃に曲が変わるので、また一からである。テンポが速い曲はフリも難易度高めなので、ついて行くのに必死。というか、全くついて行けてないし、ほとんどなんちゃってで、フリも適当にしか踊れていない。
それでもなんとなく踊れるようになると楽しい。
出来てなくても輪の中にいるだけで楽しい。
とても気分良く踊りだした頃である。
踊りの神様がいるとするのなら、人間の姿形に変えて突如降臨された。
「はい、右、左、右、前、後ろ・・」
踊りの神様は、私の真横にピタッとついて、指導を始めたのである。
つづく