『踊る日本人⑤』
祭り大好きご夫婦との再会は割とすぐであった。
「日にちが合ったので、また踊りに来ちゃいました!」と和やかなに微笑むご夫婦。
やはりお二方が踊り始めると、空気がどこか清々しい。
前世で神事に従事していたのではないかと思うくらいに、高貴な雰囲気が漂うのだ。
盆踊りの起源は本来こういうものだったのかもしれない、とさえ思えてくる。
私はやはり遠くから二人を執拗に凝視しながら踊った。
とても美しい。
休憩に入り、談笑する。
祭や踊りの話は尽きることがない。
私は鼻息荒く前のめりで、奥様に連絡先の交換を求めた。爽やかに「いいですよ!」と微笑んでくださったので内心ほっとした。すんごい嫌な顔で断られたら絶望するしかなかった。
これでめでたく踊り仲間ができたのだ。
踊りを始めてささやかな夢がぽつりと浮かんだ。
それは全国各地の祭に出向き、現地の人たちと踊りを通じて文化交流する事である。
たいそうに言うとそうなのだが、単純にみんなと笑って踊りたい!だけなのだ。
祭にはその土地の歴史がぎゅっと凝縮してるし、踊りを通じて世代や立場を超えて誰とでも交流できる場であり、踊りを受け入れると言うことは、そこの土地や人を受け入れるという事でもある。
このご夫婦がわざわざ遠方から足を運ぶみたいに、私もどこかの踊りを覚えたい。
日本各地にはまだまだ知らない踊りがあるのだ。西へ東へ、右往左往したい。
ますます鼻息は荒くなり、血眼で祭情報を仕入れる日々が始まった。
すると、ふとあるSNSのタイムライン上に一つの記事が上がってきたのである。
つづく