スツール

ターバン女のひとりごと

2023.06.15 更新

『踊る日本人⑤』

祭り大好きご夫婦との再会は割とすぐであった。

「日にちが合ったので、また踊りに来ちゃいました!」と和やかなに微笑むご夫婦。

やはりお二方が踊り始めると、空気がどこか清々しい。

前世で神事に従事していたのではないかと思うくらいに、高貴な雰囲気が漂うのだ。

盆踊りの起源は本来こういうものだったのかもしれない、とさえ思えてくる。

私はやはり遠くから二人を執拗に凝視しながら踊った。

とても美しい。

休憩に入り、談笑する。

祭や踊りの話は尽きることがない。

私は鼻息荒く前のめりで、奥様に連絡先の交換を求めた。爽やかに「いいですよ!」と微笑んでくださったので内心ほっとした。すんごい嫌な顔で断られたら絶望するしかなかった。

これでめでたく踊り仲間ができたのだ。

踊りを始めてささやかな夢がぽつりと浮かんだ。

それは全国各地の祭に出向き、現地の人たちと踊りを通じて文化交流する事である。

たいそうに言うとそうなのだが、単純にみんなと笑って踊りたい!だけなのだ。

祭にはその土地の歴史がぎゅっと凝縮してるし、踊りを通じて世代や立場を超えて誰とでも交流できる場であり、踊りを受け入れると言うことは、そこの土地や人を受け入れるという事でもある。

このご夫婦がわざわざ遠方から足を運ぶみたいに、私もどこかの踊りを覚えたい。

日本各地にはまだまだ知らない踊りがあるのだ。西へ東へ、右往左往したい。

ますます鼻息は荒くなり、血眼で祭情報を仕入れる日々が始まった。

すると、ふとあるSNSのタイムライン上に一つの記事が上がってきたのである。

つづく

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