スツール

ターバン女のひとりごと

2023.03.15 更新

『踊る日本人②』

盆踊り保存会の練習に息子を連れて行ったのは、久しぶりのことである。

まだ訳わかってないくらいの幼い頃は簡単だった。ニコニコ走り回っておばあちゃんたちに話しかけてもらって過ごしていた。

しかし段々と訳わかってくる年頃になると、話しかけられるのにも照れが出始め、待っている時間も「退屈だ」と言い始める。一緒に踊ったりなんてことは以ての外だ。

次第に息子を連れていくことにこちらが億劫になり、誘わなくなっていたのであるが、例の運動会での素晴らしい花笠音頭を見て、「これは」と思うようになった。

息子の花笠音頭は、腰の落とし具合が絶妙で、本番以外でも家で何度も踊って見せてくれた。

「うん、これはうまい!」と褒めると、気分を良くした息子は自慢げに踊ってくれる。

「お母さんも花笠音頭踊ったことあるけど、あんたほど上手くは踊れない。一回、保存会の練習に来て、先生にその踊り見せてあげてくれへんか?」と、軽く誘ってみると、案外簡単に「いいで」と答えてくれたのである。

鉄は熱いうちに打て。すぐに練習に息子を連れていく。

練習の休憩時間に、踊りの先生と息子が何やら話し込んでいる。

そして例の花笠音頭を披露してるではないか!

「お兄ちゃん、うまいもんやなあ!腰がうまいこと入ってるわあ!」と先生。

得意げな息子の顔。

孫とおばあちゃんくらいの二人だが、世代を超えて「踊り」で繋がった瞬間である。

非言語的コミュニケーションの威力は凄まじい。

古来からある踊りというツールが、今の時代にとても必要だと感じずにはいられなかった瞬間だ。

「これはシメシメ・・」とその数日後、小学生向けのオンライン阿波踊り講座に勝手に申し込むと、「は?!そんなん勝手に申し込まんといて!お母さんが踊りたいだけやろ?」とご立腹であった。

どうやら母の祭り狂いを息子が上回ることはないようだ。

つづく

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