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ターバン女のひとりごと

2022.03.15 更新

『世間話をする小学生』

息子9歳は、赤ちゃんの頃からご近所のおばあちゃんたちに大変可愛がってもらっていたので、ずいぶんおばあちゃん慣れしている。

以前住んでいた家のお向かいのNさんに、息子は「お好み焼きをNさんに配達したい」と言い出したことがあった。晩御飯のお好み焼きを、お店みたいに使い捨てパックに入れ、輪ゴムでとめて、意気揚々とNさん宅に届けにいった。

後日Nさんからお手紙をいただいた。

そこには鉛筆で、『ババゴン』と名付けられたお好み焼きを食べる恐竜が描かれていた。恐竜好きの息子を思って描いてくれたのだろう。

「おいしい」と書かれた少し震えた文字を見ると、なんともハートウォーミングな気分にさせられた。

ご近所のFさんは毎日健康のためにゆっくりと散歩している。たまに杖をつき、調子の良い日は杖なしで。

Fさんを見かけるたびに、世間話をするのだが、おしゃべり好きの息子も負けていない。畳み掛ける話に、Fさんは豪快に笑って相手してくださるのだ。

その日、クレープをおやつに食べた息子は、「Fさんにもこのクレープを届けたい」と言い出し、焼いたクレープを紙コップにくるくると巻き入れ、やはり意気揚々と配達しにいった。

何かと配達好きな息子なのだ。

後日Fさんがうちを訪れ、お礼にとぴかぴかの赤いりんごをいただいた。「これ、無農薬のりんご。ぼっちゃんが会うといつも話しかけてくれるから、うれしいの」と。

つい先日、息子が「Fさんが歩いてたから、ちょっと話してくる」と外に出かけた。

いっこうに息子は帰ってこない。「ちょっと」にしてはえらく遅い。時計を見ると、1時間近くは経っている。もしかしてそのまま遊びにいってしまったのか、Fさん宅にお邪魔しているのではいかと思い、外に出てみた。

すると息子とFさんは楽しそうに門で笑ってるではないか。

家に帰ってから息子がぽつりと言った。

「お年寄りは野球が好きなんやねえ。うちのおばあちゃんも、Fさんも野球の話をよくするよ」

兎に角地域の方々に可愛がってもらい、有難い日々である。

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