スツール

Sukkuのクスッと笑わせて

2020.07.10 更新

⑤「谷本さんのゴルフはアリ地獄」

 Sukkuをご利用される方は、目標や目的を持っておられる方がほとんどです。
今回のコラムで紹介するのは、谷本さん60歳代の男性です。
この方は約10年前に「進行性核上性麻痺」という病気を発症されました。
進行性核上性麻痺は難病の1つで、脳の中の大脳基底核 、脳幹、小脳といった部位の神経細胞が減少し、転びやすくなったり、下方を見ることがしにくい、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状がみられる疾患です。初期にパーキンソン病とよく似た動作緩慢や歩行障害などがみられて区別がつきにくいこともありますが、パーキンソン病治療薬があまり効かず、効いた場合も一時的のことが多く、経過がより早く進む傾向があります。
(難病情報センターより)

そんな谷本さんは、家業である動物を世話する仕事をされていましたが、発症して数年が経ち、だんだん動けなくなり仕事も出来なくなりました。しかし、本人は動けるようになりたい!という思いでSukkuをご利用になりました。私たちは、自分の親とそう年齢の変わらないこの方を、何とかしたいと頑張りました。
谷本さんは口数は少ないですがいつも柔和な表情でとても穏やか。身長160センチ代後半、体重が80キロ以上と肥満傾向の方です。
私たちはまず体重を落として動きやすい身体を作ろうと、リハビリを始めました。
マシーンでのトレーニングに加え、自転車を20分以上漕いでもらったり、平行棒で段差の上り下りをしたりとすごく動いてもらいました。ですが、減量の成果はあまり見られませんでした。それもそのはず、運動すればお腹が減る。家に帰って食べる食べる。私が「谷本さん、昨日の夜ご飯なに食べましたか?」と聞くと、小声で「ハンバーグ。」また次の利用時に聞くと、「外に食べに行った。美味しかった。」とボソッとつぶやくように言われました。
私は何回か聞いて、聞くことをやめました。60歳代と若いけれど自由に身体が動かないので、どうしても楽しみは食事になってしまうのです。それが分かってからは減量を目的にすることをやめました。
一方身体の方はというと、運動量を増やしたり自分の身体の使い方を意識してもらうことで徐々に成果が出てきました。歩くスピードを調整できるようになり、方向転換がスムーズになりました。それは、誰から見てもわかるくらいでした。そうなると本人のやる気もどんどん向上。自宅周りでのウオーキングの距離を増やしたりと、状態はとても改善しました。
そして、本人も自信が出てきたんでしょう。こそっと「今度5年ぶりにゴルフに行くんや」って教えてくれました。私も趣味でゴルフをしていますので、一緒にスイングの練習をしたり、飛距離を伸ばすためのトレーニングも行いました。病気の症状の1つである、歩きだすと止まらなくなる突進歩行は長い距離を歩くと出てくるので、それに対して一抹の不安はありましたが、友人に車に乗せてもらいゴルフに行かれました。
次の日私が「どやった?」と聞くと「2、3回こけたけど大丈夫やったわ」と嬉しそうに話をされていました。身体を診ると膝には打撲の跡が。でも、本人の表情を見るととても嬉しそうでしたので、そこからどのようにしてこけたのか?を聞き出し、こけない様に対処する方法を伝えたり、こけても軽傷ですむ様なこけ方を伝えました。
そして、しばらくして谷さんがボソッと「2回目のゴルフに行く」って教えてくれました。前回よりも出来るのではないか、、、と内心思っていたので、ワクワクしながら送り出しました。
しかし、次の利用日に迎えに行くと、傷だらけの顔で谷本さんが家から出てこられました。私はびっくりして、「どうしたん!?」と急いで駆け寄りました。
谷本さん「こけたんや。」
私「どこで?」
谷本さん「ゴルフ場で」
私「ゴルフ場のどこで?」
谷本さん「途中までは良かったんや。けど、バンカーでこけたんや」
よくよく聞くと・・いい調子だったがバンカーに入ってしまい、歩いてバンカーに入った1歩目で右膝から崩れ落ちた。そして、そのまま顔が砂に埋まり、そこから動こうとしてもなかなか動けず、動くたびに砂と顔が擦れて顔面傷だらけになってしまった。助けに入った友人は手を持って立たそうとするけど、足場が砂やから不安定で踏ん張りがきかない。そして、谷本さん80キロ以上あるから支えきれずに、最後は二人で転倒。周りから見ると、砂場でよい大人がプロレスをしているような状態になってしまった・・・とのこと。
結局3人がかりで谷本さんを救出したそうです。私はこのバンカーでの出来事を聞いて、大人がアリ地獄にはまって出られなくなっているところに、また1人また1人と次々とアリ地獄にはまっていく光景をイメージしてしまいました・・。
それ以来、谷本さんの口からゴルフの話しを聞くことはありませんでした。
そんな谷本さんは病気が進行してSukkuをお休みされていますが、必ず元気になってまた戻ってくるという目標をもっておられます。
このコラムを通じて谷本さんにエールを送りながら、5回目を終わります。

谷本さん!私たちはあなたが戻ってくるのを待ってますよ!!

→次回のコラムは「Sukkuを家にもっていっちゃった!」です。

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