㊱立冬が過ぎて、いよいよ冬がやって来ます。寒いのが苦手な私は、冬が近づくと何となく気分が乗らない私ですが、今年は少し違います。今年から家に薪ストーブがあるからです。先日初めて薪ストーブに火をつけましたが、これが最高でした。暖かさが違います。部屋全体が暖かくなるまでに少し時間がかかりますが、暖かくなったあとは快適です。そして、ずっと火を見ていられます。家族みんな薪ストーブの前に座って火を見ています。
炎のゆらぎがこんなにも気分を落ち着かせてくれるなんて、思ってもいませんでした。
これから冬本番。川瀬家は、今までと違った冬を過ごせそうで楽しみです。

コラム「８５歳の人生相談」

今回のコラムは、前回紹介した滝村さん（仮名）８５歳男性の、屋外歩行訓練中の人生相談諸々をお伝えしたいと思います。切実ですが面白い話もありますので、どうか聞いてください。
滝村さんは、奥さんと長男（50歳ぐらい）の３人暮らしです。
運転免許を返納した滝村さんは一人では出かけることができない為、買い物等は息子さんと一緒に行きます。
奥さんは高齢で認知症も進んでおり、ここ何年かは滝村さんが料理や洗濯など、家事全般を行っています。
滋賀県生まれ、京都育ちの滝村さんですが、なぜか標準語で話をされます。
そして、どこまでもマイペース！驚くほどに前向きです！

少し前、屋外歩行中にぽつりと滝村さんが言いました。「冷蔵庫に何もないんですよ～。ここ２、３日全然食べてないんですよ～。どうしたら良いでしょうか～？」
私たちは耳を疑いました。確か、滝村さんは長男さんも一緒に生活していたはず・・・。そして、スタッフが送迎の帰りに冷蔵庫を確認すると確かに。豆腐とケチャップだけしかありませんでした。私たちはすぐに担当のケアマネージャーに伝えました。
ケアマネージャーが同居する息子さんに連絡すると「あ～。最近買い物に行けてないんですよ～」と一言。自分は仕事帰りに外食しているらしく、全然困っていない様子。
すぐに娘さんにも連絡して買い物に行ってもらい、冷蔵庫の補充をしてもらいました。
それからは娘さんが、定期的に冷蔵庫や冷凍庫に補充しています。

ある日は、ふとこんなことを言い出しました。「うちのボン（長男）が早出の時は、早く起きて朝食の準備をしてあげてるんですよ～。ボンは朝起きられないから、僕が起こしてあげてるんですよ～。どうしたら良いでしょうか～？」と笑いながら話していました。
朝、滝村さんをに迎えに行くと、ブリーフとシャツ１枚で寝ていて準備が出来ていないことが何度かありました。そうか。これか。早朝、息子さんの準備をして疲れてしまい、二度寝してしまったんですね。
最近話題の、50・80問題がここにありました。
たまには、奥さんが料理を作ることは難しいのですか？と聞くと滝村さんは一言。
「妻の作る料理は、メチャクチャ不味いんですよ～。」
残念です。

つい先日も、歩行訓練中にとても神妙な顔をして、「大変お恥ずかしい話で、誠に申し訳ないのですが、トイレットペーパーを1本お借りできないでしょうか？」
「え！どうしたんですか？」と聞くと、「実は家のトイレットペーパーがなくなりまして・・」
私たちは帰りにそっと、滝村さんのカバンにトイレットペーパーを２本入れました。理由は聞かずに。
それからしばらくして、いつもの歩行訓練中にスタッフが、最近ご飯食べれていますか？と聞くと、滝村さん、「実は・・・。ボンが時々ご飯を食べにいこうと、外食に連れて行ってくれるのですが、中華かラーメン屋しか行かないんです～。ラーメン屋もこってり系ばかりで、あまり口に合わないし困ってるんです～。どうしたら良いでしょうか～？」
滝村さん８５歳です。さすがにこってりラーメンは身体のためにもやめときましょうか！と言うのが精一杯でした。
聞けば、外食の次の日はお腹を下し、トイレにこもりっきりになるそう・・。
そうか、だからトイレットペーパーがなかったんや。

また別の日の出来事。Sukkuが終わって自宅へ送り届けたとき、滝村（以下T）さんがポケットをゴソゴソしながら、「あれ！？鍵がない～！」鍵がないと家に入れません。
私「じゃあ一回Sukkuに戻りましょう。」
T「大丈夫です。今日はボンが休みですから、もう帰ってきます。」
私「けどいつ帰ってくるか分からないでしょう？」
T「もう昼ですから帰ってきます。大丈夫です！」
私「じゃあ。帰って来なかったら連絡してください」と伝えました。
そして後日、あれからどうでしたか？と聞くと
T「結局、午後２時前に帰ってきました～」
ボン、父親ほっといて昼ごはん食べに行ってたんかい！！

そんな滝村さん、お迎えに行くとマスクをせずに来られることが多いので、スタッフがマスクお願いできますか？と伝えます。「あ～、すみませ～ん。用意したのに今日も忘れちゃった～」と、ポケットから出します。
何を。
キッチンペーパーを。
本人気付かずに、口に合わせて耳にゴムを回そうとします。
けど、ゴムはありません。あるはずもありません。
だって、キッチンペーパーですもん。
滝村さんのポケットには、キッチンペーパーが入っていることが多いのですが、なぜポケットに常備しているのか・・まだ誰も聞けていません。

先週、滝村さんが屋外歩行中にまたもや、「最近、冷蔵庫になにもないんですよ～」と一言。今度は私たちが、直接娘さんに電話してそのままを伝えました。
しばらくすると娘さんから電話がありました。内容は「あの話は冗談です。」とお父さんが言っているとのこと。冗談かい！
屋外歩行の人生相談に慣れてきた滝村さん。もう、あなたの相談事は真剣に聞かん！
（おしまい）
次回コラム「数々のSukkuの失敗談」です。