スツール

ターバン女のひとりごと

2021.09.10 更新

『ラグビーとフレディ・マーキュリー』

ラグビーというものをはっきり認識したのが、夫が夜な夜な酒のつまみに、神戸製鋼で活躍した平尾誠二さんの特集番組を何度も見ていたことだった。

申し訳ないが、わたしには平尾さんはクイーンのフレディ・マーキュリーにしか見えなかった。

ロックスター・フレディ・マーキュリーが楕円球を追いかけている風にしか見えない。

そのあと、度々公園にて夫とランパスなるものの練習に「付き合わされた」時も、球を受け取ることで精一杯、欽ちゃん走りになるしかない。

これの何が面白いんだ!と一人憤慨した。

しかしその数年後に聖地花園で高校ラグビー全国大会の準々決勝を観戦し、目の前で高校生たちが体を張って倒れてはまた起き上がり、楕円急を追いかけてる姿を見て、夫を差し置いて、

「いけーーー!」と拳を振り上げ、大絶叫していたのである。我を失うとはこういうことなのだと思った。それくらい、高校生たちの懸命さに胸を熱くした。

息子が小学1年生の 秋、ラグビースクールに入会した。

二年生の春、夫がスクールのコーチになった。

以降家族総出でのラグビー漬けの毎日である。

身体と身体のコンタクトが多いラグビーは、その分やっている子供達も、見守っている保護者たちも前のめりになる。

暑さの中、バタバタと倒れることもしょっちゅうで、その度にうちわと氷とポカリを持って走る大人たち。

自分の子供以外も、みんなの子供みたいになってくる。

その積み重ねで、楕円球を持って参加してなくても、保護者たちは声を出して子供を応援する。

ゲームでトライが決まると、子供以上に喜んでいるのは保護者たちだ。スクールの保護者はラグビーを愛してる人たちが非常に多い。

日常でこんなに人々が熱狂する瞬間ってあるのだろうかと思う。

気がつくと、息子は美しいスクリューボールを投げられるようになっていた。

こんなに小さな手で。

そして熱心にわたしに教えてくれるのである。

「あんな、お母さん、こうすんねん。腕のスナップを、きかすねん」

なんども教わっても、一向にスクリューボールは上達しないが、平尾さんがフレディ・マーキューリーに見えていた頃よりかは、ラグビーを何倍何倍も好きになっている。

絵・文/ 岸岡洋子

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