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おばあちゃんとゆふ子

2021.02.10 更新

おばあちゃんは与えの人の巻

立春を過ぎると春めく日差しを感じる日も多くなってきましたね。
ぽかぽか暖かく、薄着で外に出る日が待ち遠しいです。

毎晩寝る前に子どもたちと絵本を読んだり、子どもたちの好きな日本昔ばなしを見てから寝るのが我が家のルーティンになっていて、先日見た昔話で、優しいおばあさんが村にやってくるおっかない嫌われ者の鬼にも「まぁ、お入りよ」と笑顔でもてなして鬼の心をほぐして、仲良くなってしまい、おばあさんのお陰で村にも平和が訪れるという話を見て、私の師匠のおばあちゃんを思い出さずにはいられなかった。

編み物をしながらお茶をしたり、おばあちゃんとちくちくしながら色んな話を聞く。
編み物に纏わる話はほどほどに、昔の話や、最近の面白かったこと、おばあちゃんの珍エピソードなど。いつもちくちく編みながら笑って話すこの時間が大好きだ。

その珍エピソードの中に先日、子ども達と見た日本昔ばなしのような話があった。

おばあちゃんの家はいつも来客がとても多い。近所のおばちゃん、おじちゃんがいつもおばあちゃんと話をしにきてくれている。
他にもヤクルトレディさん、農協の人、庭師さん、来る人来る人みんなに「さむいなぁ、まぁ入ってください!」と言ってお茶を出したりして世間話をしたりしている。
とっても仲良さげに話をしてるので、お客さんが帰ってから「いつも来てくれる人なん?」と聞くと「あの人は、はじめてやわぁ〜」なんて言うからびっくり!なんて事が多々ある。

そんな調子なので、その昔も…

おばあちゃんが出先から帰ってきたら家の中から作業着を着た男性が出てきたそう。
あら、鍵は空けていったかなと思いながらも
庭師さんかと思って「あら、こんにちは、どうもご苦労様です、どうぞお茶飲んでって」
とお茶を出して話していたそう。
おばあちゃんがお茶やお菓子を出したりしてもてなしてるうちに、その男性が「すみませんでした。」とポケットからお金を出した。
おばあちゃんは「え?」と思っていると、その男性は庭師さんではなく、泥棒に入った紛れもない泥棒さんだったそう。
泥棒さんは怪しまれないように、おばあちゃんが勘違いしている
庭師さんになりきって、おばあちゃんに出されたお茶やお菓子を食べながら話してるうちに罪悪感に苛まれたのだろう。お金を出して謝ってきたそう。
おばあちゃんはびっくりしたけど、警察にも通報することなく、許したそう。

そんな話をするもんだから、おばあちゃんお人好しが過ぎるで…と思いつつも泥棒さんの気持ちもちょっとわかるような気持ちもする私だった。
おばあちゃんと話していると、喜んでもらおう!というおばあちゃんの無性のもてなし心に、本当にこちらの気持ちが解き解されるような気持ちになってしまうのだ。
きっと泥棒さんもそうだったのだろう。
もうこの人には悪いこと出来んと思ったのかな。。(笑)

おばあちゃんはいつでも与える人だなぁと思う。
優しさや、暖かさを相手にまずは自分から与えて相手の心を解いていく。
見返りはいらない。
相手が喜んでくれたらそれでよし。

師匠の背中は大きすぎます。
なかなかあんな風にはなれないけど、
そんなおばあちゃんが大好きで誇りに思う私です。

先日子どもたちとみた昔話のおばあさんの話を聞きながら、現代版のこんな話をこの前聞いたなぁなんて思っていたのでした。

また編み物から離れたコラムになってしまいましたが、最近は編み物片手にちくちくしながら別の事を学んでるような、そんな教室です。
でも名目は編み物教室ですから、編み物もたくさん教えてもらってます。
でも編み物が霞むようなエピソードが多い、楽しい編み物教室なのです。(笑)

写真・文 / 田畑由布子

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