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おばあちゃんとゆふ子

2021.02.25 更新

人生あみものの巻

私はいつも「これが編みたい!」と思って取り掛かり、編み図を理解しておばあちゃんにアドバイスもらってから編み始めて、いつもだいたい3回は失敗して編み直すはめになるのです。(3回で済むのはマシな方。)
編み直さずに最初からスムーズに編み進めて最後まで編み直し不要だったものはなんと一度もないのです。

あ、ここ間違った!と思って二、三目を戻って直す事はちょこちょことあったとしても「うわー!ここまできたのに!ここが違うとこの先どうしようもないやん、どうしよ、、なんとか、、なる??…ダメ。解こう、、涙」のレベルの間違いです。
編み物は元は一本の糸で、糸を一目一目編み、重ねていき、いつの間にか“面“になるという物なので、せっかく積み重ねて出来てきた面をまた一本の糸に解く時の悲しさたるや…ここまできたのに…という、絶望感です。笑

今度こそ間違わずに編みたいといつも思うのですが、だいたい3回はやらかしてしまって悲しい顔して解く羽目になるのです。

でもそうして間違いを重ねることによって、やっと自分のモノにできると言うか、やっと理解したような気持ちになるのです。

あぁ。間違ったな。これどうにか誤魔化そう…としても誤魔化していいものと、ならないものがあって、私のミスは大半どうにもならない事が多いのですが、仮にどうにかこうにか誤魔化して最後まで編み続けた事があり、ですがどんなに面になっていくのがワクワクする編み物でも、その間違って無理矢理誤魔化した箇所が気になって気になって、目がそこにしかいかないのです。
出来上がってきた全体よりも、もう、その気になる所しか目に入らないのです。
せっかく日々、コツコツ編んで面にしていくのに、あの時やっぱり戻っといたら…という後悔がすごいのです。
こうなるともう気持ち悪くて仕方ない。
出来上がってきてもなんだか嬉しさが半減するような。
こういう理由から、もう潔くミスを認めてその場へ戻って修正!!そして理解して前へ!!のスタンスを大事にしようと思うようになりました。

おばあちゃん曰く
「誰でもそうやわ、由布子。おばあちゃんも最初から上手くいかんもの。
試行錯誤も大事やね。
編み物は正直の積み重ねやからなぁ、編んだ通りに出来てくる!正直やで〜、その時の編んだのが面に出る。やった通りにしか出来上がらない、辿った通りに出来てくる。
どうにかできる事は自分で対処したらいいけど、こりゃあかんと思ったらまた戻ってそこからスタートしたらいい。
その方が気持ちいい。裁断してしまう裁縫とは違って編み物は始まりから終わりまでずーっと繋がってるからな!やり直しはどこからでも何回でも!」と。
おばあちゃんに編み物の相談しながら、なんかそれって生き方みたいと思って聞いていた私です。

いつもまっすぐ暖かく生きて、人生を重ねてきたおばあちゃんから聞く話は、おばあちゃんは単に編み方の話だったのかもしれないけど生き方そのものの話に聞こえたのです。

何度でもやり直せるなら、納得して前に進みたいし、何度でもやり直せるなら失敗も怖くない!何を今更ですが、最近はそう改めて思います。
いや、でも失敗せず出来ることならやってみたい!ですが、以外と実は分かったつもりでいるだけだった事が多いのかもしれないです。

ちゃんと理解できてなかった事、勘違いして覚えて進めていた事に気づくには、失敗として現れてこないとずっと気づけなかった事だから、これは意味のある失敗。
今後につながる失敗!!これでいいのだ!!

と自分を鼓舞して気合を入れて今日も糸解く…(うわーーー!!くっそーーー。と、とてつもなく悔しくなりますが…笑)

こんな経験を編み物で積み重なってきたのですから、私生活でも失敗、壁にぶつかった時、立ち直る術を身につけて編み物に出会う前よりもポジティブになったように思います。
だって人生も裁断されたものではなく、始まりから終わりまで糸のように繋いで重ねて、その正直の積み重なりが面となるような気がしているからです。

人生フルーツ
と言うとても素敵なドキュメンタリー映画がありましたね。

私にとっては、人生編み物。
でしょうか!?笑

写真・文 / 田畑由布子

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