おばあちゃんズとおじいちゃんズと私の巻
わたしには父方の祖父母と、母方の祖父母どちらとも夫婦揃って健在で、そしていつも編み物を教わっているのは母方のおばあちゃんなのです。
私の実家はクリーニング店を営んでいて、私の父母と共におじいちゃん、おばあちゃんも隠居してるもののまだまだクリーニングのお仕事を手伝ってくれている。
おじいちゃんの手はとても丁寧で、おじいちゃんのクリーニングの技術を求めて「この大事な洋服はここでしかお願いできない」と、近場はもちろん、遠方からのお客さんがたくさん大事なお洋服を持ってきてくださる。
今は隠居してるので父が技術を継いで、昔からのお得意さんも、新しいお客さんもたくさん思い入れがある大事なお洋服を預けに来てくださっている。
でもじいちゃんもアイロンをかけたり、まだまだ丁寧な技術は健在。
いつも私の夫のスーツやワイシャツを丁寧に仕上げてくれる。
そんな私の祖父は先日96歳の誕生日を迎え、いつもは誕生日に孫やひ孫みんなで集まって誕生日会をするのだけど、今年はコロナ禍の影響で遠方に住む孫やひ孫は集まれず、みんなでLINEでおじいちゃんに動画メッセージを送ってお祝いをした。
おじいちゃんもとても喜んでくれて、みんなに返事を送りたいとの事で、おじいちゃんからの返事の動画を撮った。
「みんなありがとう、おじいちゃんは96歳になりましたが、まだまだこれからも色んなことに”挑戦”していきます。」とメッセージをしてくれた。
いつも前向きなおじいちゃんらしいメッセージで、96歳の挑戦!力強くかっこいいなぁ〜と思って嬉しかった。
そしてその妻にあたる、おばあちゃんは90歳、俳句の先生をしている。
絵を描いたり俳句を詠んだり、芸術肌のおばあちゃんだ。いつも優しくて心配症でいつも私たちの心配ばかりしている愛のあるおばあちゃん。クリスマスや桃の節句、お誕生日には私の娘達に趣味の可愛い手書きの絵手紙を送ってきてくれる。
母方の祖父は頑固一徹。いわゆる頑固ジジイで私もしょっちゅう怒られてきたけど、実はすごく私たちの事を思ってくへてることは知っていたし、おばあちゃんからもよくそう聞いていた。頑固ジジイだけど、ひ孫には見るからにデレデレしていて頑固ジジイの影すら見えないから面白い。
そして編み物教室の師匠のおばあちゃん。
私はこの大事な4人に手編みのものを贈りたい。
編み物はミシンを踏むように一気に完成しないので一目一目、一段一段完成に向けて丁寧に重ねるしかないので、とても時間がかかってしまうけど、暖かいものを贈りたいなぁと思う。どんなものが喜んでくれるだろうか。
おじいちゃん、おばあちゃんからもらったあたたかさ、優しさ、今度は私も返してゆけるかな。
そして最近はこんな私にも編み物をオーダーしてくれるお友達がちらほらいてくれて、光栄でうれしい。
編み物は自分のために編む事よりも断然に誰かの為に編む時間が多く、でもそれはとても楽しく、優しい、豊かな時間なのだと思う。
覚えてきた技術で誰かのためにあたたかな贈り物ができるならこんな嬉しいことはない。
おばあちゃんとのコラボセーター完成しました。袖とヨークの編み込み柄は私が。
前後の見頃のメリヤス編みはおばあちゃんが。師匠との合作、唯一無二のセーターが出来あがりました。
わたしにとって、きっと一生の宝物です。
写真・文 / 田畑由布子