スツール

おばあちゃんとゆふ子

2020.09.25 更新

夢のバトンの巻

おばあちゃんの編み物は本当に修理だろうとなんでもできる。
編み物で出来ないことがない。
この時期はよくお友達から、ウール毛糸の虫食いのセーターの修理を頼まれていて、それすら治せてしまう。
私の失敗したセーターの丈の修理も出来る。
わからないことは何を聞いても解決してしまうおばあちゃんの編み物はあまりにも神業なので、ついこの間ぽろりと「おばあちゃん、編み物のプロやわ、本当に」と言うと
「プロではないけど、編み物講師資格の検定のために勉強して課題も色々してきたんやけど、いざ認定試験の日に田植えの日と重なってしまって、結局行けずにそのままや〜アハハ」と笑って応えてくれた。
結局その次の年もその後も試験が田植えの時期と重なってしまう為に取れず、いつの間にか試験は受けず今に至るとの事。
昔は今みたいに機械で田植えをしていたわけじゃなく、何日もかかって手で苗を植えていたし、今は手放してしまった大きな田んぼが当時はいくつもあったし、農家が田植えの日に家を空ける事なんてありえない事だったらしい。
なのでもう試験は受ける事はその後はなかったらしい。
これは試験の時までに出てた課題のセーターやで〜と言いながら当時に編んだとっても素敵なスズラン模様のセーターを出してきて見せてくれた。
通りでおばあちゃんの編み物はプロ技。
資格こそはないけれど、講師の資格をとるためにたくさん勉強してきて技術も講師並み。
「今からでもとりたいけど、さすがに年齢ーオーバーやわ〜もう」と笑いながら言っていた。いつしか資格に拘らなくともその分の勉強はしてきたからええかと思うようになったらしい。その当時の教科書とか、道具とか、その当時のその他の課題も今もとってあるみたい。
そっか、おばあちゃんのそんな夢があったんだな。と思いながら話を聞いていた。

おばあちゃんの手仕事を受け継いで、私もおばあちゃんみたいなおばあちゃんになりたいと始めた編み物。
おばあちゃんのその話を聞きながら、まだまだひよっこの私が言うにはおこがましいが、いつしか私もおばあちゃんの夢を引き継ぎたいなと言う思いがムクリと心の中で湧いてきた。
おばあちゃんが叶えられなかった夢、私が叶えてみたいな…なんて。
そんな風に心の中で思っていたら
おばあちゃんが「由布子も今からこんな風に編み物していたらきっともっと上手くなるから、いつか資格とったらええよ!子どもらがもっと大きくなってからな〜!」と言ってくれた。

そんな風におばあちゃんに言われたら、絶対そうしたい!なんて思ってしまった。

私の編み物はまだまだ、わからない事の方が多い編み物。失敗の方が多い。
車の免許で言えば乗り始めて一年以内の初心者マーク。
ひよっこ中のひよっこ。
でもおばあちゃんに習う編み物は楽しくて、幸せな事がいっぱい。
編む事に夢中で毎日ちくちくしている。

おばあちゃんみたいなおばあちゃんになりたいのは勿論、そしておばあちゃんの夢だった事もいつか叶えられるように…なんて。
そんな目標ができたここ最近の私の中の変化の話。

この冬おばあちゃんとコラボレーションでセーターを編むことになった。
編み込み柄がかわいい、ノルディック柄のセーター。
柄の所は私が編む。
メリヤスの部分はおばあちゃんが手伝ってくれることに。
これ、出来たら絶対宝物になるだろうなと思って編むのが楽しみでならない。

今編んでいるマフラーが完成次第、そのセーターに取り掛かることに。

一年前の今頃、自分がこんなに編み物にハマっているとは思ってもみなかった。

でも、もう編み物がない暮らしなんて今は考えられないし、いつしかおばあちゃんの夢だった講師の資格がとれたらなんてにわかに思っちゃっているから、人生って不思議。
でも、楽しい。それだけは確実。

写真・文 / 田畑由布子

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