スツール

おばあちゃんとゆふ子

2020.06.10 更新

手編みの贈り物の巻【前編】

私に何か編めるようになったら、まず編んだものをどうしても貰ってもらいたい方がいた。
私が「おばあちゃんみたいに編み物をできるようになりたい、始めてみたいけど今までの自分の飽き性のパターンを考えるとなかなか手が伸びない」と友達にポロリと言ったら
「是非はじめてほしい。受け継いでほしい。
私にも大好きなおばあちゃんがいて、私と同じ石のことが好きで、色々と石のこと聞いたり話したししたかったのだけど、亡くなってしまって、もっといっぱい石の話を聞きたかったと今になって思うのよ」
と話を聞かせてくれて、私の背中をそっと後押ししてくれて、編み物をはじめようと決めたきっかけになった大切な存在。

その方にどうしても最初に編める様になったものを貰ってもらいたいなと思った。

おばあちゃんに、どうしても貰ってもらいたい友達がいて、その友達にプレゼントできるように頑張る!
何か編めるのうになるのは時間かかるかもしれないし、もしかしたら夏ごろになってしまうかもしれないけど、手袋編んでプレゼントしたいな。
と言って話もしていて、手袋をまず教えてもらうことになった。

おばあちゃんにあれから、本の編み図の読み方、基礎の裏編み、表編みを習ってから、ガーター編み、メリヤス編み、かのこ編み、それから自分にはできる訳ないと思ってた縄編み(ねじり模様になる編み方)を覚えて編める様になっていた頃だった。

おばあちゃんの半端に余った毛糸をもらって、棒針を借りてお喋りしながら色んな編み方を習うのはとても楽しくて、編み物の本の編み図や、YouTubeなどの編み物動画をみてもサッパリ分からないのが、コーヒー飲んで喋りながらおばあちゃんの大雑把な説明だとなぜか理解しやすく、覚え易い。
どんどんと編めてゆき、自分でも驚くほど夢中になって色んな編み方を覚えてゆきたくなり、そしてまた飽きてしまったらそんな自分が嫌だからな…と、敬遠していた編み物がとても楽しくて、空き時間をみつけてはいつも編んでいた。
おばあちゃんが「ありゃ〜、なんと上手い!筋がええ!」
といつも合いの手(いや、愛の手?笑)をいれてくれるから余計にスイスイと編めた。
どうしても自分が覚えにくい編み方の時は、おばあちゃんの説明している姿を携帯のムービーで録画する。という、私とおばあちゃん流のYouTuberみたいな事をして二人でケラケラ笑いながらしていた。笑
その自己流動画はきっと他の人がみたら絶対わからないし、すごぬマヌケだけど、これがまた私には家で復習するには抜群にわかりやすくてこの上なかったのだ。笑

こどもたちが保育園に行ってる間、朝からずーっと編んで、妊婦健診の待合室でも夢中で編んで、子どもたちが家に帰って、ご飯お風呂、寝かしつけの時間がバタバタ終えて9時ごろからまた編んで。
手を動かすのはこんなに楽しいんだと思った。
楽しくて、無心になれて夢中だった。
お腹の赤ちゃんのもぞもぞ動く胎動を感じながらする編み物の時間は本当に幸せだった。

やってしまった!!!と、失敗すると駆け込み寺のようにおばあちゃんの家に駆け込んで、間違った所をまた教えてもらえるのもおばあちゃんの編み物教室の特権だった。

後編へつづく

手編みの贈り物の巻 【後編】

夢中であみつづけてゆくと、どんどんと形なってゆくのが嬉しい。
達成感もあり、自分もなかなか出来るやん!
という感覚も嬉しい。

いよいよ手袋ができてきた。

余り糸で編んで、編みたい手袋の編み図の指定の糸ではなかったし、何せはじめて出来たわたしの処女作の手袋は、編み方もガタガタとしていて、緩くあんだり強く編んだりした所が混在していて、グローブほど大きな手袋になった。笑
デカーーー!!!ごそごそする。笑

お友達にあげるつもりだったけど、こんな大きなグローブみたいでガタガタの手袋。さすがに大事なお友達にわたすのは申し訳なく、おこがましい。
これはお友達に渡すにはお蔵入りすることにしたが、自分がこれから着けることにした。
ゴソゴソデカい。でも自分で編んだ初めての手袋。不格好だけど愛おしい。
きっとずっと大切にするだろうな。

ここまでかかった時間はニ週間ほど。
…それにびっくりした。

飽き性の自分、手袋は不要だろうけど、夏頃には編めて渡せるようになればいいなと思っていたのに、ニ週間ほどで編めた!

まだまだ冬。
そして三女が産まれるまでに何か一つでも形になって編める様になっていれば…と思っていたのに、産まれる前に手袋を編める様になっていた。

ちょっと。ほんのちょっとだけです。
でも自分の事見直しました。そして自信がつきました。(図に乗らない様に小声でいいます。笑)

おばあちゃんとの月水金の編み物教室の時間が楽しかったおかげだったかもしれない。
おばあちゃんの合いの手(私には愛の手に感じた)が心地良かったのかもしれない。
そしておばあちゃんの手仕事を少しずつ覚えて受け継いでいくこの感覚がとっても嬉しかったのだった。

でも、さすがにこのグローブのような手袋は渡せない。
今お腹は37週、産まれるまでに編めるかわからないけどもう一度指定の糸で編み直して、お友達の手のサイズを聞いて編み直すことにした。今編んできた手袋の復習しながら、失敗したところを失敗しないように意識して、おばあちゃんにアドバイスをもらった所を図面にメモを書き込みまくって、編み目がガタガタにならないように糸をしっかり引っ張って編見直した。

そしてそれも家事や育児のあいまの時間で編みながら約一週間で編めた。
三女もお腹の中でお利口にしてくれていた。笑

やっぱり少しガタガタだけど、お友達の手の大きさに合いそうで、グローブのような手袋とはだいぶと大きさが違ってフィット感がある。
図面通りにきちっと。指定糸で編む事の大切さも実感。勉強になった。

人様に渡すにはおこがましいような手袋だけど、はじめての作品は絶対に渡したかった。

正直こんな夢中になれると思っていなかったし、こんなに楽しく編めると思っていなかった。
ゆふちゃん、編み物をはじめてみたら、と背中を優しく押してくれて本当にありがとう。
おばあちゃんに教えてもう編み物の時間はとても楽しいです。
という気持ちと一緒に、ガタガタの手袋をお友達に贈った。
嬉しはずかしの、初めての編み物の贈り物だった。
ありがとう、とっても暖かくて手のサイズにピッタリ!!!と、
早速着用してくれた写真が送られてきて、ものすごく心が暖かくなった。
私は手袋してないのに、ほくほく。ジーン。
こちらこそありがとう。本当にありがとう。
と何度も言った。

編み物を贈るってこんな気持ちなんだ。

おばあちゃんいつもこんな気持ちで私たちに編み物編んでくれてるんだなぁと
思ったら嬉しくて堪らなくて、より一層おばあちゃんからもらった手編みの数々があたたかく思ったのだった。

手編みのものって、纏うのはもちろん暖かくて気持ちいいのだけど
編んで贈った側もまた、そんな気持ちにさせてもらえるんだなぁ。

編んで渡したい人がいっぱい浮かんできた。

編み物って、手編みって本当に楽しいなと思った。

写真・文 / 田畑由布子

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