スツール

ターバン女のひとりごと

2023.05.15 更新

「踊る日本人④」

同世代で盆踊りに熱狂する方と出会わない中、先日思いも寄らぬ出会いがあった。

いつものように踊りの練習会に参加すると、年の頃が近い夫婦らしき二人がぽつんと立っていた。

聞くと、十年ほど前から盆踊りにハマり、ぜひ長岡京音頭を覚えたいということで問い合わせをして、遠方から来られたというのだ。

音楽が流れ練習が始まると、その夫婦は自然と輪の中に馴染み、初めて踊る踊りでもスムーズにこなしていた。

お二方共背筋はピンと伸び、とても美しい姿勢で、それはもううっとりするくらいの立ち姿である。

わたしは少し離れたところで踊りながら、二人を執拗に凝視した。

二人の踊りから、熱い踊り愛を感じずにはいられない。涼しい顔で踊っていらっしゃるが、相当好きなんだろうな、と。

生唾を飲み込み、休憩に入った途端、猛ダッシュで二人に接近する。

初対面から鼻息荒く前のめりで二人に迫った。

「何か、舞踊習われていらっしゃるんですか?」

聞くと二人はゆっくりと首を横に振り、「何も習ったことありませんよ。お祭りで見よう見まねで踊ってるだけです」と冷静に答えてくれた。

思わず大きく開眼した。

「それだけで、そんなに上手なんですか?!」

「いやいや〜」

謙虚に微笑まれる二人。

え?マイナスイオン出てる?と思うくらい、ほっこり和やかなご夫婦なのである。

そこから怒涛の質問攻撃をした。

「どの踊りが好きですか?」

「どんな祭りに?」

「きっかけは?」

するとこちらの熱量に負けないくらいのパッションで答えてくれる二人。

間違いなく自分と同じくらい、祭りを、盆踊りを、愛している・・!

上手い下手とか関係なく、踊りを見るだけで、その人がどれくらい踊りが好きなのかがわかる。

二人は間違いなく、大好きなのである。且つ、謙虚であり、真剣で、踊りへの敬意を感じる。

もう清々しさしか感じない。

普段省エネモードで生きているが、祭りのことになると残量関係なくエネルギーを使い果たしてしまうので、後でハッと我に返る。

なんか鼻息荒い人がおる、くらいに思われただろう。

もう少しゆっくり話したかったが、子供の習い事の迎えで早退しなければならず、慌ただしく二人に挨拶してその場を去る。

割と遠方から来られたので、もう二人とお会いすることはないかもしれない。

だけど。

きっとご縁があればまたお会いできるだろう、となんとなく感じたのである。

つづく

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