スツール

Sukkuのクスッと笑わせて

2021.06.10 更新

㉗コラム「17代目住職は、マジシャン」

肘付きの椅子に座った大柄の男は周りの目を集めるためか、ライターに火をつけると持っていたティッシュに近づけた。ティッシュには火が燃え移り、一瞬にして燃えカスになり、男の分厚い手に覆われた。その分厚い手を開くと、なんと燃えカスはなくなり、代わりに小さく折られた千円札が手のひらから出てきた。
そしてその千円札は、びっくりして腰を抜かした小学生に渡された。

渡した男は、平野さん(仮名)80歳代 男性。
この大柄の男は、歴史あるお寺の17代目住職。
住職を務めながら、学校では英語の教員を務めた経歴の持ち主。
聞けば、高校生に英語の授業をしているかと思えば、突然マジックをするなどなかなか面白い先生だったとのこと。熱血教師ではないが、生徒や教育に興味がないわけではない。放課後生徒が質問に来ればしっかりと教えるが、それよりもマジックに興味があるようで、他の先生達とも少し距離を置いていたらしい。
今の時代に平野さんみたいな個性的な先生っていないやろか?と聞くと、「小学校6年間で1人、自分に合う先生が見つかれば良いでしょう。」確かにその通りです。
ちなみに先程のティッシュを使ったマジックは、Sukkuに初めて来られた日に突然披露されたもので、みんな色んな意味で度肝を抜かれました。(スタッフの1人は平野さんが燃えてしまうと思い、消火器を取りに走りました)そして、腰を抜かした小学生は我が家の長男で、この日以来、平野さんのファンになったのです。

そんな平野さんは、病気の影響で頻尿や歩行に障害があるのですが、Sukkuには来たくて来ている訳ではありません。
このままでは歩けなくなるから、周りの人に行ってきなさいと言われ、少し嫌々来られています。ですので、よくお休みされます。
Sukku利用中も、なぜかマシンでトレーニングをしている最中にトイレ行きたいと仰ります。そして、トイレに行って便座に座り、「ふ~。」と一息ついて何もせず。平野さんどうですか?出そうですか?と聞くと「ダメでした。空振りでした。」それってトレーニングさぼりたいだけやん!
他にも、ご利用日に限って奥さんから電話があって「来客があるから休みます。」と笑いながら言われます。なぜか1か月に何度も来客があるのです。スタッフが「来客は何時ごろに来られますか?」と聞くと「遠方からなので、何時になるか分かりません・・・」断言します。完全にこの夫婦はグルです。
歩行中も、常に何かを持とうとします。しかも、かなり遠くから手を伸ばすので届きません。そのたびに僕たちは「平野さん、まだ手を伸ばすのは早いです!」と言うと、右手で自分の太ももを叩き「この右手がだめなんです!」と、悔しそうな顔をして言います。

あの皆がびっくりしたマジックからもう1年。
毎週帰る間際に「来週マジックします。」と言いながら、準備して来られる様子もなく…あれからマジックは見れてません。それどころか休みがちになっています。歩くことも危うくなってきています。ですので、最近曜日を変更しました。Sukkuには珍しく女性の利用者が多い日に変更しました。しかも良く話しをする女性ばかりです。なんとか女性の活力に引っ張られて頑張ってくれることを期待します。頑張れ!平野さん! 
以上「17代目住職はマジシャン」でした。(おしまい)

次回のコラムは、「85歳!マスターズ狙います!」です

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