わたしは5月生まれ。家族にも5月に誕生日を迎えるものが多く、一年のうちでもっとも親しみを感じる季節です。6歳くらいの頃、めずらしく父とふたりで、すこし遠くの城跡公園へ出かけました。それも5月の頃でした。ひたすら高く青い空、爽やかな風、豊かな樹々、草地の緑の香りが、深く記憶に残り、父がそのとき撮ってくれたたくさんのモノクロ写真から、今も鮮やかによみがえります。
ところが……今年の5月は、なんと1か月も早い梅雨入り。観測史上最速で、毎日うっとおしい雨がつづきます。せっかく植えた野菜の苗も、最初になった茄子の実が腐ってしまいました。プランターに苗から育てるわたしの野菜づくりは、ほんのささやかなリアルな体験にすぎません。けれど、たったそれだけのことでも、食べものを育てる厳しさへと想像はおよび、そこからさらに、気候変動へと考えは広がってゆきます。
昨今はもうだれも、気候変動への疑念をもつことはできないでしょう。自然がとてもおかしい。その原因が人間の活動であることに、だれも疑いをはさめません。日々のゴミ出し、食品をおおい尽くすプラスチック、夏ごとに発生する大雨、洪水……。毎日の暮らしのあらゆるところに、不安の種はころがっています。このままではどうなってしまうのか。いくら庭で植物を育てても、今すぐに周囲から緑が消えてなくならなくても、不都合な事実はおおい隠せないのです。
そんなとき、こんな本を読みました。
『人新世の「資本論」』
斎藤幸平 集英社新書
「富」とはいったいなんだろう? 最初の問いはそこからです。お金? 美しい服? 豪勢な食べ物? ラグジュアリーな旅行? それらはほんとうの富だろうか。
そうではない、と著者はもう一冊の本、『100分de名著 カール・マルクス 資本論』で述べています。
「例えば、きれいな空気や水が潤沢にあること。これも社会の『富』です。緑豊かな森、誰もが思い思いに憩える公園、地域の図書館や公民館がたくさんあることも、社会にとって大事な『富』でしょう。知識や文化・芸術も、コミュニケーション能力や職人技もそうです。貨幣では必ずしも計測できないけれども、一人ひとりが豊かに生きるために必要なものがリッチな状態、それが社会の『富』なのです」
このほんとうの富が、商品でないことはあきらかです。とくに自然は、経済成長では守れません。それなのに、20世紀に入ってうなぎのぼりに発展してきた経済は、便利さと引き換えに、自然環境をどんどん悪化させ、動植物を絶滅させてきてました。長い間、この問題は、発展しつづける技術で乗り越えらると語られてきました。そして環境保全をさえ商品化しようと、グリーン政策などが提唱されてきたのです。でも破壊のスピードは、それらではもう止められません。そう、成長ではもうどうにもならないのです。
そこで著者が主張するのは、脱成長です。成長を止める。そんな……? と思いますよね。わたしもそんな生活に耐えられるのか? と最初は思いました。しかし、この本は我慢の思想を唱えるものではありませんでした。今のやり方による成長を止めても、ほんとうの「富」や「豊かさ」にいきつける道が必ずある、と説いています。
空気、水、食べ物、気候、時間……このようなほんとうの富を、社会に共通の資本にする。鍵はそれです。今までは、ただゴミが目の前からなくなればいい、と簡単に燃やして世界中の水や空気を汚してきました。食べ物や着るものも、貧しい国に劣悪な労働を肩代わりさせて、安く大量に手に入れてきました。こうやって、汚いもの臭いものを外部に押し付けてきたのです。そうして見ないようにしていたことを、ちゃんと見よう。周囲のみんなとちゃんと考えていこう。おしゃれなロハスでも清貧の思想でもない、市民レベルでほんとうの富を共通の話題にして、考えて、行動にうつそう。
でも、具体的に何をすればいいの? そうなんです、いつもそこで立ち止まってしまう。ただエコバックを買えばいいとは、決して思っていません。でも小さな存在であるわたしに、いったい何ができるのでしょう? そのヒントをこの本は指し示してくれます。
市民が出資して電力を地産地消する市民電力、共同出資・協同運営のワーカーズコープ、市民参加で自治的におこなう社会運動。それらの動きが、スペインのバルセロナや、オランダのアムステルダムで、活発に行われているという実例があげられています。それらはなんとか頑張れば手にすることができる、ほんとうの意味のわたしたちの富のようです。
気候問題や脱成長というと、とかく暗くお説教くさく響くものですが、1987年生まれのこの若い思想家の言葉は、小さな存在の自分にもできることがある、と希望を感じさせてくれるものでした。
なお、この本の論旨は、タイトルにある通り、マルクスの『資本論』をもとにしたものです。しかし、ながく『資本論』とされてきたものとは大きく異なります。これまでの『資本論』は、マルクスの初期の思想で、労働者の解放と生産力至上主義とをつよく結びつけたものでした。けれど晩年、彼の思想は、エコと脱成長へと収斂してゆきます。そしてその思想は、草稿や書簡のままで、まとまった書籍としては未刊行なのです。それらが現在、世界中の研究者の手でまとめられようとしています。著者もその研究者たちの一員です。
経済思想にはまったくうといわたしにも、よくわかるように語られた本書は、前述の『100分de名著』とあわせ、ほんとうに良書です。おすすめします。
写真・文/ 中務秀子
2018年・第27期のフィルムカメラ教室の生徒さんとして、お付き合いが始まりました。今もフィルムカメラを続けてらして、二眼レフカメラにも挑戦中。デコさんは本好き、映画好き、芸術好き、お話好き。いわば “ 忙しいひまじん ” です。とても自由で全然気取ってない表現に親近感を覚えさせてくれる先輩です。そして心友になりました。
27ページ
シジュウカラは、林などで1年間ずっと見れる(留鳥りゅうちょう)野鳥です。
冬になると前に紹介した、コゲラ(NO,1)やゴジュウカラ(NO,11)、メジロ(NO,15)などと群れをつくって行動します。
昆虫やクモ、木の実などを食べます。
たまに家の庭に置いたピーナッツを食べに来ることもあります。
食べ方は1羽1羽違うそうです。
春には、サクラのみつも※食べているところを見たことがあります。
「ツーピーツツピー」や「ジュクジュク」などと鳴きます。
オスはお腹の黒い線が太く、メスは細いのがオスとメスを見分けるポイントです。
ぼくが、おもしろいなと思ったことは鳴き声でいろんな会話ができることです。
例えばカラスが近くにいると「チカチカ」、
ヘビがいたら「ジャージャー」と鳴きます。
しかも、「気をつけろ」と「集合」を合わせて「気をつけて集合」という会話もできるからです。
ここでクイズです。
メスが卵を産む前にたくさん食べるものはどれでしょう。
1. よう虫
2. サクラのみつ
3. カタツムリ
4. 木の実
正解は次の鳥図かんで発表します。
最後に前回のクイズの答えを発表します。
正解は、
3.の5種でした。
※鳥はくちばしなので何かを吸うことはできません。
でもハト類は吸うことはできます。
絵・文/ 中野響
お姉ちゃんとひーくんが生まれる前の、2005年10月から撮影をさせて頂いてます。今も2~3年に1回は必ず、スタジオや城陽のご自宅で撮ってます。小学6年生になったひーくんは、この前の撮影の時に鳥に魅せられていると話してくれた。それが小学生レベルの鳥好きの話ではなく、僕からすればもう学者レベル。しかも視点がユーモラスなのでこれはスゴイ!是非、図鑑を作ろうと盛り上がり、WEBという形で毎月2回、発表してもらっています。
今年は例年にない早さの梅雨入り。
雨が降り続き外出できず、湿度も高い毎日。私の天然パーマは湿度70%を超えるともはや制御不能。なかなか気分の晴れない日々が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
そんな私、昨年から始めた自分なりの健康法があります。それは、毎日体重計に乗ること。そして一週間に一回ほど粗食(おにぎり1個と小鉢1つ)の日を作ることです。体重の増減は多少ありますが、粗食の日を作ることで胃を休ませることが出来ます。これで、健康管理は出来ているように感じます。実際体重は約7㎏減りましたし、毎週公園で子供と元気に遊ぶことが出来ています。仕事での疲れも軽くなっているように思います。
良かったら皆さんもどうでしょうか?粗食のススメでした。
今回のコラム「箱根八里の半次郎」
半治さん(仮名)97歳男性です。
この方は、それはとてもしっかりしていて、バイタリティー溢れる方です。
約10年前に奥さんを看取ってからは、ずっと1人暮らしでした。95歳になった頃、長男夫婦が戻ってこられ同居していますが、ほとんど自分のことは自分でされます。洗濯も風呂洗いも食事も全て自分でされていました。身体のほうは、腰が悪いため足に力が入りにくく、シルバーカーを押して歩かれていて、難聴も認めていました。
長男夫婦は母屋に、自分は離れの2階に住んでいて、毎日何回も1階と2階の往復をされていました。車の運転免許はないので、遠くへの移動は友人に送ってもらっていて、そのお礼に昼ご飯を御馳走する。という生活をしていました。
ある日、私が朝5時30分くらいに近くのファミリーマートへ行くと、シルバーカーを押したおじいさんが出てきます。なんと、半治さんです。向こうも気づいて「ファミリーのパン美味しいんや!緑色のパンが」と朝から大声で話してくれました。(半治さんはファミリーマートの事を、ファミリーを呼びます。)
そして、趣味はカラオケです。なんと90歳から始められました。毎週月曜日と木曜日の朝にカラオケの新曲が何曲か配信されるそうで、その中から自分のお気に入りの1曲をノートに書き写して覚えます。覚えると金曜日にカラオケに行って歌います。
しかし半治さんは難聴ですので、ずれまくっています。ずれていることに気づかず、そして、大声で歌いますので、地元では有名人です。
1年に1度、カラオケサークルでホールを借り切って歌う時があるそうです。その時の様子を、写真で嬉しそうに見せてくださいました。上下白のスーツで、胸元には真っ赤なバラのコサージュ!髪は七三分けで、ピシッときめています。歌う曲はもちろん「箱根八里の半次郎」です。
「足が悪いけど立ったままで歌うんや!そのために、Sukkuに来てるんや!」と、しっかりと目標を持って、一生懸命に頑張っておられました。
季節毎に贈り物をしてくれるのも半治さんでした。筍の季節には、家の裏山で取れてすぐのものをSukkuに置いてくれます。(筍を取るのはもちろん友人で、半治さんは色々と指示をされています。)冬には蜜柑を送ってくれます。かなり高級な蜜柑です。スタッフで分けて家に持って帰ると、フルーツ大好きの我が家の子供たちが感動して食べていました。
そして、桐さんはSukkuをとても好きで信頼してくれていました。
「Sukkuに来てるから、97歳になっても歩けているんや!」と、大きな声で色々なところで話してくれていました。
そんなある朝、半治さんから電話がかかってきました。「さっき仏さんに水を持っていく時にこけたんや!足に力が入らへん!先生今から見てくれ!」と。私は骨折を疑いましたので、「半冶さん!Sukkuより、すぐに病院行き!」と伝え、家族さんに病院に連れて行ってもらいました。結果は、大腿骨骨折・・・。
手術を受けリハビリも頑張りましたが、もう一度歩きたいとの願いは叶いませんでした。家で生活する事が出来なくなり、自宅近くの施設に入所することになったのです。
そして昨年、99歳で亡くなりました。大往生です。
私の家と半治さんの家は近いので、行く店も同じです。
たまに近くのファミリマートへ行くと、緑色のパンを見つけます。メロンパンです。私は心の中で思います。半治さんずーっと、ファミリーの緑色のパン美味しいって言ってたなー。蜜柑を食べているときもそうです。子供たちと蜜柑を食べていると「半治さんのくれた蜜柑ほんまに美味しかったなー」って、よく次男の緑が言います。
お年寄り相手の仕事なので、亡くなる方は毎年おられます。皆さんそれぞれに思い出があります。最近は園部のどの場所に行っても、様々な方との思い出が湧いてきます。
過去・現在・未来。どこに行っても私達の心の中には利用者さんがいます。
苦い思い出も楽しい思い出も、大切に心にしまって・・・。
明日に向かって今日も進もう。(おしまい)
次回のコラムは「17代目住職は、マジシャン」です。
写真・文/ 川瀬啓介・未央
Sukku 川瀬啓介 / 未央 (理学療法士・鍼灸師 / 鍼灸師)
〒622-0002 京都府南丹市園部町美園町4-16-38
TEL 0771-62-0005
2017年から京都の南丹市でリハビリを中心としたデイサービスをしています。利用者さんと過ごす時間は、笑い声と涙が入り混じる賑やかな毎日です。そんなささやかな日常、会話から気付かされること、そして個性派揃いのスタッフについて…色々な事を綴っています。
2011年11月からのお付き合い。楓くん・緑くんが生まれる前から撮影をさせて頂いていて、今も1年に1回は必ずスタジオ撮影にお越し下さいます。Sukkuというデイサービスの屋号は、佳代が名付けさせて頂きました。飾らない温かさ、自分の好きが明快で、歯切れがよい。けれど、流れる時間はゆっくり。そんなお二人の人柄が大好きで、バランスを崩した時には体を診てもらおうと決めているから安心です。笑いと涙のデイサービスの日々を毎月2回、綴ってもらってます。
『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』房野史典
この本は、ペリー来航から戊辰戦争までの幕末の流れを噛み砕いて説明した本です。
歴史の本ですが、参考書のような難しい感じはせず、
「驚愕でした。
最初から最後まで全部悪いことしか言ってないから。
一つ一つのパンチが強すぎる、史上最悪のギャラクシークーデターです。」
だったり、
「藁の家となってしまった幕府を、もう一度レンガの家にするため、朝廷と仲良くしようと目論む子ブタさん。いや安藤さん。」
といった笑える表現ばかりです。
かといって、全部面白おかしく書いてあるのではなく、会津戦争のエピソードは特に…。
ちなみに、私のオススメは池田屋事件です。
歴史好きな方も、そうでない方も、ぜひ一度手にとってみてください!
文・写真/ 木下琴子
2006年3月からのお付き合い。琴子ちゃんが生まれる前から撮影をさせて頂いてます。小学6年生になった今も記念日ごとには必ず、スタジオやお好きなロケ場所で撮影させて頂いてます。埼玉県からお越し下さいます。幼い頃から、本が好きと撮影のたびに僕に話してくれた琴子ちゃん。読みたい物語がまだまだ沢山あると思うと、これからが楽しみとも話してくれた。そんな琴子ちゃん目線の書評を毎月2回、依頼しています。