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デコさんからの便り

2020.05.10 更新

『分解の哲学』(副題:「腐敗と発酵をめぐる思想」)
藤原辰史 青土社

本と映画がただただ好き、な、デコです。写真も大好きです。竹内さんの、不肖、弟子としてフィルム写真もぼちぼち撮っています。
 このお便りでは、読んだ本や観た映画をみなさんにご紹介しようと思います。たまたま今、covid-19 で出かけづらい毎日ですが、本や映画で視点をすこし遠くへうつしてみると、気が楽になるかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。

「分解」(腐敗と発酵を含む)について、さまざまな視点から書かれた本です。

 生産→消費という一方通行の活動を推し進めた現代。でも、生産→消費→分解→再生、という流れは、かつて豊かにあった世界でした。今あるリサイクルの流れともすこし違ったものとして。

 現代では、リサイクルの名の下に、大量のプラスチックが海に投げ捨てられ、波に細かく砕かれ、いつまでも分解されない小さなかけらとなって海に漂っています。そんな名ばかりのリサイクルではなく、動物のフンをみみずやフンコロガシがさらに消化分解して豊かな土にもどすような、壊れた器を漆でつないで、金継ぎという新たな美を生み出すような、ボロや古紙をあつめて再生させる人がそれで生活できるような、そんな「分解」と「再生」の活動にもう一度着目しよう、というのがこの本の語りかけです。

 たしかにわたしたちの生活は、なぜこの灯りがともっているのか、この食べ物はどこから来るのか、この服はいったいだれがつくっているのか、さらには、自分が排泄したものはザーッとトイレで流したあとどこへいくのか、考えずにおこうと思えば、できます。また、毎日知る大量の情報を流すこのPCというものだって、いったいなんなんでしょう? それが壊れたら、また次の新しいモデルを買う(…というか買わざるを得ない)。何かおかしくないか? そうこの本は問うて、その先に「分解」を考えよう、そしてその方法は豊かにある、と提案しているのです。

 読後、自分にもなにかできることがあるかもしれない(数々あるエコロジー本のように悲観的にならずに)、と明るく考えられる本でした。

写真・文/ 中務秀子

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