スツール

デコさんからの便り

2020.09.25 更新

 前回のコラムの最後に、愛猫ももが大病から回復し、落ち着いた日々がもどってきました、と書きましたが、その後なんと! またもやももが、別の病気になってしまいました。
 さらに2週間の看護の日々をへて、ようやく2、3日前に全快。ほんまやろね? うそじゃないよね? とももに尋ねたい気持ちでいっぱいですが、よく食べよく眠っている、そのゆったりした姿を見ると、どうやら大丈夫なようです。
 やれやれ、こうして1か月におよぶハラハラの日々が終わり、気がつくと、わが家でいちばん先に紅葉するはなみずきの葉っぱが紅くなりはじめていました……。

 さて、こんな風に次から次へと課題がふりかかってくるのが日常。そんなときこんな2冊の絵本はどうでしょう。

『へろへろおじさん』『へらへらおじさん』
佐々木マキ 福音館書店

 へろへろおじさんが街を歩いていると、上からマットが落ちてきたり、犬にひきずりまわされたり、果てにはブタの大群に出会ったり……。おじさんは次から次へと不条理な事件に巻きこまれて、白いスーツも心も、もうボロボロ。
 一方、もう1冊の絵本のへらへらおじさんはというと、見てください、この表紙(写真)。靴は片方ぬげてるし、かばんの穴にはバッテンテープ。でもおじさんは、鼻歌まじりに暢気に歩いていきます。ところがへらへらおじさんにも受難が待っています。突然マンホールから現れたワニにかみつかれたり、空から降ってきた金星人にビビビと光線をあびせられたり。
 でもおじさんは、それでもなお、ふふふんと鼻歌をうたいながら、おうちを目指して歩いていきます。まるでバックに、ファレル・ウィリアムスの『ハッピー』が聴こえてきそう……。その歌はこんな歌詞です。

”ぼくをダウンさせようったて無理さ、
ぼくのハッピーのレベルは高すぎるんだから。
だってぼくはハッピー。
幸せは真実だって知っているから。
自分がやりたいことに気づいているから”

 人がダウンする(落ちこんじゃう)のは、何かいやなことが起こったり、何かを失ったりするからですよね。じゃあ絶対にそれが起こらないようにするには……何もしないことです。けがをするのがいやなら、好きなスポーツをしない。けんかをしたくないなら、誰とも友だちにならない。死にたくないなら、生きない。
 それではなんにもなりません。あったことは、あったこと。そこからどうするかがたいせつ。また、何かを失って悲しいなら、悲しいほどよいものをもっていたことを、喜びたい。そしてほんとうに悲しいとき、話を聴いてくれる人を、ふだんから見つけておきましょう。

 へらへらおじさんがずーっとめげずに歩いていく先には、何が待っているんでしょう。それは、この絵本の最後を見てみてくださいね。あ、そうそう、へろへろおじさんの最後も、ぽっと心があたたまる結末になっているのでご安心を。

写真・文/ 中務秀子

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