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おばあちゃんとゆふ子

2020.07.25 更新

おばあちゃんの編み物教室のモットーは?の巻

産まれる数時間前までもうじき陣痛と闘うこともつゆ知らず、ちくちくしていた編み物。

出産したら入院中、赤ちゃんのお世話の合間に編み物しよ〜っと入院セットの中に編み物道具を用意していました。
3人目だし、赤ちゃんのお世話には少し余裕があるだろうし。

入院中、長女と次女と離れるのは寂しいけど、でも朝昼晩、ご飯も作らずとも運ばれてきて、ゆっくり食べられたり、長女、次女をお風呂に入れたり、寝かせたり…ドタバタの日常から少し離れて赤ちゃんとゆっくりと二人の時間になれる入院生活が少し楽しみだった。

長女次女を寝かせた後、夜10時ごろお腹が少し痛いことに気づいて、時計をみると既に陣痛らしき痛みが10分間隔で来ていたので、産院に連絡してすぐ入院となった。
そのまま、あれよあれよとお産が順調に進み、その数時間後の2時ごろ無事に三女が産まれた。
ほやほやの可愛い新生児の赤ちゃん。
家族みんな大喜びで赤ちゃんを迎えてきてくれた。
おばあちゃんも翌日、赤ちゃんと私に会いに来てくれた。
…が、わたしのベッドの横にある入院セットのバッグを見てびっくり!!

産後とにかく休むのが仕事。
編み物なんて産後は以ての外。
また編み物はいつでも出来る。今はこの可愛い赤ちゃんの事と自分の体を休める事しか考えたらあかん。
と言って産後1ヶ月経つまでは編み物禁止令と共にわたしの編み物バッグを没収される。笑

そして本当に1ヶ月経つまで返してもらえなかった。笑

私編み物師匠のいつも優しいおばあちゃん、
怒られてしまったけど、愛情を感じたのも確かだった。

でも本当におばあちゃんの言う通りだったとすぐに痛感することになる。

3人目だからと余裕をこいて入院セットに準備していた自分をビンタしたいと、後々思うのだった。笑

どんなに可愛くてよく寝てくれても、
後陣痛などの体のトラブル、貧血、寝不足、赤ちゃんが寝てる時間は自分も爆睡。
手も目も使ってちくちく…する気力なんて皆無だった!!
退院後もやはり、1ヶ月先まではフラフラ。
長女次女の生活もあった為里帰り出産もしなかったので、本当に産後も毎日過ごすので精一杯だった。
編み物の事を考える間もない日々だった。

やっと、編み物したい!そろそろ出来ると思ったのは1ヶ月健診も過ぎ、日常に余裕が出てきたころだった。
おばあちゃんのお許しも出て、また編み物教室が再開。
急いでしなくてもな、ぼちぼちと
編んで行ったらええ。
編める時に編んでしないとあかんよ。
まずはお母ちゃんとして子どもたち優先したげなあかんよ。優しい気持ちでな。
育児やら家事の合間にするのがまた頭が切り替わってええのよ。ぼちぼちしいな、楽しく。
と言ってくれた。

そうそう、お母さんとして愛のある編物をしたいからそうしていこうと思えた。

編み物って不思議で、今まで編んできたものを振り返ってみてみると、その時期にあった出来事と風景が一緒に蘇る。
この手袋編んでた時、次女の事でこんな悩みあったなぁとか、この帽子編んでた時長女の歯が抜けた時期やなぁとか。
編んできた全部のものにその時期の風景が浮かぶ。
きっとちくちく編み物しながら色んな事頭で考えたりしながら編んだりしてるのかな。

だから、焦ったりイライラしながら編んだりすると、きっとその事が蘇るだろう。
編んだものをみて、イライラしながらや無理しながら編んだ風景が蘇る編み物は嫌だ。

やっぱり気持ちに余裕をもって、優しい気持ちを編み物に反映したいので、わたしの編み物は心がやりたい時に、優しい気持ちを込めて進めていきたいなと思う。

おばあちゃんに産後編み物を没収されたのは、きっとそういう意味だったのだろう。

おばあちゃんの編み物教室は
優しい気持ちをひと針ひと針こめていくことがモットーのようです。
手にした時に優しい気持ちになれるように。
優しい気持ちを纏えるように。

写真・文 / 田畑由布子

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