暮らしの根っこ

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大阪の東住吉にお住まいの、とても誠実な3人家族。
ご主人は家業をお継ぎになり毎日お仕事。
奥さんは1歳の太一くんをスクスクと育てている。
こんな風にあたり前の毎日を、あたり前のこととしてちゃんと受け止め、ちゃんと生活をされている。
こういう人たちに、強く心を打たれます。
そして太一くんのためになればと、畑を借りて野菜を作られている。
暮らしの根っこがしっかりと張っていて、美しく思います。

妹さんご家族からご紹介を頂いたのが、1年と少し前。
その時は妊婦姿を1枚撮影させてもらい、3カ月後の春にはお宮参りの撮影。
この時はフィルム1本分を撮影し、ALBUM20の10ページ分が完成していました。
そして先日、1歳になった太一くんとお家近くの桜並木で撮り、そのまま畑へ。
フィルム1本分を撮影し、残りの10ページに写真を貼り足し、20ページのALBUM20がようやく完成しました。
太一くんが夏の太陽の下、所狭しと畑を走り回る姿を思い浮かべています。

格好なんか気にせず毎日まいにち、汗水たらして働く。
自分たちの好いと思うことを奇をてらわず生活に取り入れ、ただ人知れず暮らしていくこと。
しなやかであり強くありたいと思う。

今日も月曜レンズを読んでいただいて、ありがとうございます。

小粋なふたりだった

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結婚1周年の記念にアルバムを残したいと、初めての二人が相談に来てくれた。
その時の印象はとても控えめで、派手さを好まず、自然体を大切にしているように見えた。
しかしこだわりという面では、何か大きなものを感じた。
自分達だけの小さな大切な思いを積み重ねて、毎日を過ごしてるんだろうと思った。
その積み重ねがやがてカタチとなり、写真を残したいという表れになってくれたのだろう。
スタジオといつものあそこで撮ることになった。

当日、普段からお召しになられているという着物姿で来られた。
軽く着こなすその姿に、粋ですね! と言った。
そうなんだよな。
ジブンが好いと爽やかに思うと、周りもその空気にやられるんだ。

時折、すっーと冷たい風が2人の隙間を吹き流れる。
冷たければ冷たいほど、これ以上冷えないように、寄り添って歩く。

そしてALBUM20が完成しました。

ボクにできること

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春の新○○も桜吹雪とともに一段落をした。
入園、入学、入社。
それぞれの世界に一歩を踏み出す姿は、園児であっても勇ましく思う。
特に小学校への入学は、社会との接点が生まれ始める初めの一歩になる。
どうか自由に自分の世界を描いてほしいと願うとともに、
応援してやりたいと思う。

そのスタートとなる入学式の日、ボクはあちこち撮影に出掛けた。
今日という写真は後々、子ども達にとって必ず効いてくる時が来るから、心して撮った。
ご自宅から通学路を歩いて学校までの道のりを、写真を撮りながら一緒に歩く。
いつもと一味違う空気を察知してか、子ども達も真っ直ぐ前だけを見て緊張の面持ちで歩いているから、こちらまで息子たちの頃を思い出して、呼吸が浅くなる。
どの学校も様子は一緒で、校門の前にはとても不思議な光景が広がっていた。
ボクらの時代と違って一家に一台いや2台のカメラ率の昨今、入学式の看板の前には、写真撮影を待つ家族で長蛇の列が出来ていた。何十人のピカピカと親御さんが笑顔で並んでいる。
ただ桜には見向きしない様子だったので、その間に校庭の桜の下でバシバシ撮った。

「今日は何枚?」と聞くと、うちの馴染みのお客さんはみんな、声を揃えてこう言う。 「適当に」
「はいよ。」 こういう時はフィルム1本ということなのだ。
ALBUM20に貼り足して行く。

撮影にお邪魔したご家族はみんな、結婚式の撮影からのお付き合い。
10年近くになるので、家族同然だと思っている。
撮影中も日常の様子を爽やかに話してくれるんだけど、みんな変わらぬ幸せを丁寧に噛み締めて日々を過ごしている訳ではなく、今日まで色んな見えないものと戦いながら一つひとつ乗り越えているんだと思った。
朝から晩まで走り回っている共働きの家族。
病におかされながらも、止まれないでいる家族。
ココロがしんどくなって、でも折れずに必死で立っている家族。
写真の晃平は未熟児で生まれ、お宮参りの時や七五三の時はやっぱりまだまだ小さかった。でも一生懸命食べて、凛々しくここまで立派に大きくなった。

ボクにできること。

1年の中で一緒にいれる時間はほんの1時間ほどだけど、
乗り越えている凛々しさや、その最中でも安らいでいる表情を残すために、
やさしくなれる時間を作ることがボクにできることだと思う。

植物力

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いきなりだけど、植物が気になる。
生命体としての植物力を学びたいと真っ直ぐに思う。
妻の今一番気になる牧野富太郎さんのことや、先日哲学者の梅原猛さんの話しを聞いて思った。人の生き方は植物から学ぶべきなんだと。
梅原さん曰く、日本人は農耕民族だけれどそれ自体も実は環境破壊だと、遠い深いことまで述べられていた。そこまでのことになると、あまりに専門的すぎてたじろいでしまうが、序々に勉強してみたい。

北海道夕張郡の長沼町という町へ2年前の夏、撮影に呼ばれた。
花の生産者さんの撮影のため、ひたすらビニールハウスを渡り歩いた。
Tシャツに長靴姿でみんな汗をタラタラかきながら、でも美しい花を見ているせいか、さっぱりした心持ちで撮影に挑めた。
緑一面の大地の中、ここに住む人達の自慢はやっぱり植物なのだと、2日間ずっーと同行してくれたおじさんと一緒にいてそう思った。
白髪でヒゲをはやし、メガネをかけた、言わば植物博士みたいな気のいいおじさん。「タケウチさん、いい木があるから見に行こー!」と爽やかに言う。
ボクの発想だと、いいお店に連れて行ってあげるとか、いい人を紹介するとか、そんな植物や自然に比べるとちっぽけな思いつきの中でしかもてなす事ができなかった。でもこの町に住む人達のもてなしとは、自然であり木々であり花なのだ。
あっーなんて心豊かな人達なんだろう。
おじさんの植物を見るまっすぐ目に、ほれぼれした。
あの日から自然や木々がうんと身近に思え、真の大切なものは何なのか問いただされた。

今年の1月から3月までは根をしっかり張るために、あえて内向きの仕事をしていた。STU:Lの更なる可能性を広げるためにこれから先は、今まで通り当たり前のことをしっかりやって行く事に加え、ある意味一新する。
それには先ず自分と向き合う必要があるので3ヶ月間、向き合ってきた。
自問自答の世界だった。
ようやく1つの答えが出たので、4月からは外向きの仕事に切り替えます。
植物でいうところの、芽が出て膨らんで花が咲く。

実験と太陽の塔のふたり

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吾輩は平凡である。
どこにでもいる極々普通のカメラマンである。
ただひとつだけ他のカメラマンと違うところは、イレギュラーカメラマンだということ。言い方を変えれば個性的だということです。
お客さんがとても個性的で、ご自身がそうである場合と撮影のシチュエーションが個性的だという場合がある。
お話を伺い、コミュニケーションを取ればとるほど成るほどと頷けるのであるが、初めて相談に来られた時には一瞬たじろいでしまうほど、イレギュラーなことが面白いほどよくある。
そういう方々を手ぐすね引いて待っている訳では決してないんだけど、何故かそうなのです。

結婚式の前撮りの仕事がたまらなく好きだ。
3人で全てのことを決めていくから、チームメイトとしての奥深く豊かな人間関係を構築できる。互いの思いをぶつけ合い、好いアルバムを残す!という同じゴールを共有し目指し、その先には達成感が必ず待っていてくれる。

お二人は自身が個性的な場合である。
彼は実験が大好きな理科の先生。彼女は岡本太郎氏を尊敬する、前衛的なイラストを描く芸術肌。
和装にも関わらず、スタジオでの撮影には太陽の塔のミニチュアをいっーぱい並べて、ポーズ写真。岡本太郎氏の分身に囲まれて、満足気な彼女。
そんな花嫁います?そんな花嫁を見て、心から好かった思う新郎います?
なんと恐ろしく可笑しいイレギュラーぶりな二人。
外へ飛び出してからは緊張もほぐれ、最後にはパンダの被り物をしてそこから退場するという筋書きを、見事にやってのけたのだ。
チームメイトのメイクさんは、どんなアルバムになるのかきっと心配に思っていただろうけど、お二人が喜ぶ完璧なアルバムに仕上がった事は、数週間後の強烈な反応で分かった。
あの日、3人が一体になれたんだと思った。
ALBUM20をお作りしました。

その数日後、カメラマン冥利に尽きる途轍もない仕事を受けることになるとは、
この時はまだ知る由もなかった。